左手に十字架のついた珠を持ち、右手で祝福を与えるキリスト像は、礼拝用聖画として代表的な図像の一つと言われます。この像はアントワープで刊行された銅版画をもとに、銅板に油絵具で描かれました。画面右下に「IS 97」と記されていることから、「IS」を「15」と解釈し、1597年に描かれたとする説があります。
当時の日本ではキリスト教の布教をすすめたイエズス会によって、西洋流の絵画教育が行われていました。この像も裏面に「Sacam. Iacobus」と書き込まれていることから、ヤコブ丹羽(丹羽ジャコベ)が宣教師ジョバンニ・ニコラオの指導を受けて描いたものと推測されています。
これまでは1999年に撮影した画像を公開していましたが、2019年度東京大学デジタルアーカイブズ構築事業により再撮影を行い、従来の公開画像とあわせて、より高精細な画像のほか裏面や外箱の画像も公開しました。(第1~7コマが2019年度撮影画像、第8コマ目が旧画像です。)
参考文献
『海を渡ったキリスト教 : 東西信仰の諸相 : 開館五周年記念特別展』
安高啓明(編)
出版:西南学院大学博物館 2010年
『日本美術史』
井上洋一(執筆)
出版:美術出版社 2014年
『大航海時代の日本美術 = Japanese art in the age of discoveries』
九州国立博物館(編)
出版:西日本新聞社, TNCテレビ西日本, 忘羊社 2017年
『茨木のキリシタン遺物 : 信仰を捧げた人びと』
出版:茨木市教育委員会 2018年