呉秀三(くれ しゅうぞう, 1865-1932)は、日本の近代精神医学の基礎を築いた精神医学者で、東京帝国大学医科大学精神病学講座を設立した榊俶(さかき はじめ, 1857-1897)のあとを継ぎ精神病学教授、松沢病院院長を務めた。日本神経学会(日本精神神経学会の前身)の創設、私宅監置の実態調査(『精神病者私宅監置の実況及び其統計的観察』, 1918 https://doi.org/10.11501/985160)、病院改革等の精神医学の功績がある。一方で同郷の富士川游(ふじかわ ゆう, 1865-1940)とともに日本医史学会の設立に関わり、医学史の分野の著作も多い。
東京大学医学部の元となるお玉が池種痘所の設立に尽力した箕作阮甫(みつくり げんぽ, 1799-1863)は祖父にあたる。
呉秀三文庫は呉秀三の旧蔵書で、受入の時期により4つのコレクションに分かれる。
1期:呉茂一寄贈図書
昭和11年9月24日の日付の呉茂一寄贈者の印が押印された資料。呉茂一(くれ しげいち, 1897-1977)は呉秀三の長男で、ギリシア・ラテン文学者。東京大学文学部教授、在ローマ日本文化館初代館長などを務めた。日付から呉秀三没後に寄贈されたと推定される。旧神経(精神医学教室旧蔵図書)などに一般の図書に混ざって配架されている。資料の数量、状態等を調査中。
2期:書画・和本・写本
昭和36年(1961年)に呉茂一により寄贈された資料。請求番号「呉:49」以降は1941年から医学部精神医学教室に寄託されていたものが、あらためて寄贈されたもの。呉家ゆかりの人物による書写本や刊本、呉秀三自身の書写による精神医学、シーボルト研究、医学史研究の資料等約90タイトルと、掛軸、巻子本、折本仕立ての書画12軸、1帖。「呉氏文庫」の印が押されたものもあり。書画には昭和38年1月30日の日付の呉茂一寄贈者の印が押されている。1963年に医学図書館に設置された呉秀三文庫は、この2期の資料にあたる。
3期:医学文化館からの移管資料
医学文化館はかつて青梅市にあった、財団法人日本医学文化保存会が医学関係の文化財を収集し保存し展示するための施設で、呉秀三関係の資料も呉家から寄託されていた。医学文化館旧蔵の呉秀三関係資料は、2010年にあらためて東京大学医学図書館に寄贈された。
呉秀三の周年行事に関する資料、写真等や没後に刊行された呉秀三に関する資料からなり、呉秀三のレリーフやシーボルト氏記念碑メダル(生誕100年記念)などの資料も含む。
4期:精神医学教室からの移管資料
2017年3月に精神医学教室から移管された資料で呉秀三筆の書1軸。同時に呉秀三が著書に使用した写真を多く含むガラス乾板も移管された。
「精神医学教室旧蔵ガラス乾板」を参照。
図書に関しては東京大学OPACで「文庫区分:呉秀三文庫」で検索できる。
呉秀三文庫一覧 https://www.lib.m.u-tokyo.ac.jp/book/kure.html