資料の解説

 明治30年代の東京帝国大学を撮影した大判横長の写真帖。明治33(1900)年のものは、フランス・パリの万国博覧会、明治37(1904)年のものは、米国・セントルイスの万国博覧会に出品するために製作された。当時の総長、前総長や部局長、教授たちの肖像と校舎設備の状況を撮影した写真を収録し、序文や見出しなどには英文が併記されている。明治37年版(南葵文庫本)では、明治33年版に比べて、新築校舎や新任教員の肖像写真を加えるなどの増補がなされている。

 発行者は、両者ともに明治から昭和初期にかけての著名な写真家であった小川一真(おがわ・かずまさ 1860~1929)の小川写真製版所。小川一真は、明治15(1882)年に渡米して最新の写真技術やコロタイプ印刷術などを習得し、帰国後東京で開業。全国の社寺宝物調査に随行して撮影を行い、明治22(1889)年の東洋・日本美術専門雑誌『国華』の創刊にも携わった。他にも、皇族や皆既日食、濃尾大地震、日清・日露戦争、清朝末期の北京紫禁城の様子などの写真撮影を行っている。