隆熙改元祕事(リョウキ カイゲン ヒジ) / [内田良平著].

リョウキ カイゲン ヒジ

Ryouki kaigen hiji

種別
図書
内容記述

請求記号:鴎G35:83

注記:全頁

本書は国家主義団体、黒龍会の幹部であった内田良平が、大韓帝国(李氏朝鮮)の高宗皇帝を廃位させるため、明治38年(1905)から40年(1907)にかけて武田範之・李容九らとともに暗躍した活動の経緯を記したものである。「隆熙」とは、高宗廃位後に改元された大韓帝国の元号である。のちに葛生能久編『日韓合邦秘史』(黒龍会出版部,1930年)の資料としても用いられた。手書きのカーボン複写である鴎外文庫蔵本は、柱に「越後中頸城郡高士村 岩の原葡萄園」とあることから、この葡萄園の創立者であった川上善兵衛の手になると考えられる。川上は、武田範之に親炙し、パトロンとして彼の活動を支えていた人物である。鴎外とも交流があり、鴎外の日記大正6年(1917)4月7日の条には、川上が武田の事跡に関する資料『洪疇遺跡』(鴎A30:197)を持参したことが記されている。これは、川上が武田範之伝の執筆を鴎外に依頼するための資料であったと伝えられる。本書も、こうした経緯から鴎外に贈られた資料の一つであろう。鴎外文庫にはほかにも、祥雲晩成『洪疇武田範之師小伝』(鴎H20:416)や『李容九上書』(鴎M90:88)など、関係資料数点が現存している。結局鴎外は、武田範之伝の執筆を断念したが、のちに川上自身がこれを完成させて、現在『武田範之伝—興亜前提史—』として刊行されている。 本書が持つ武田範之の序と内田良平の緒言には、ともに明治40年9月と記されているが、実際に版行されたのは『日韓併合始末』に収録された時(大正10年9月序)であり、本文も若干異なっている。また、本書には朱筆により誤字訂正や推敲が多数施されているが、その内容が報告書の誤写や財政記録の金額の訂正など、関係者しか知りえない情報にもとづいていることなどから、校正刷りのような役割で制作されたものと考えられる。(小・出)

参考文献: 川上善兵衛『武田範之伝−興亜前提史−』日本経済評論社,1987年

参考文献: 出口智之「《資料紹介》鴎外文庫蔵武田範之関係資料−鴎外と韓国と川上善兵衛と−」(『文学』8巻2号,2007年3・4月)

参考文献: 柳生四郎「武田範之の「洪疇遺蹟」」(『図書館の窓 東京大学附属図書館月報』Vol.8, no.5,1969年5月)

翻刻: 金正柱編『朝鮮統治資料』第4巻,韓国史料研究所,1970年

コレクション名

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