東京日々新聞 九百四十四号

Type
Book
Issued
1875
Description

Level: アイテム

identifier: O-COL-SN-190

Type: 錦絵

Subject: 新聞錦絵

number of pages: 1

来歴-所有者(L6-001): 東京大学大学院情報学環図書室/附属社会情報研究資料センター

来歴-現物資料の来歴(L6-002): 1970年代後半小野秀雄邸より旧新聞研究所に移管。1980年代から2000年代にかけて情報学環本館7F展示室に保存されていたものを、2007年以降図書室/社会情報研究資料センター貴重資料保存スペースに移管。

言語(L6-077): ja

内容記述(L6-068): 車夫の機転で財布還る (読み下し文_括弧なし:世に二度愕然といふ事ハ往々あれども実に/二度びつくりの/話あり大阪仙坡/なる一商人の手代/西京の取引先より/千円/余りの金/を受取り/其帰途伏/見の舟に/乗後れ一人にて/仕立舩も冗費なりと思ひ人力車を雇ひて徹夜大/坂迄陸を急がせしに何所なりけん大坂へハ程遠か/らぬ孤村を過んとせし時夜ハ三時すぎ月ハ山の端に隠/れて物のあいろも分らず車夫も此時提灯の蝋燭を/継かへんとなす折柄雲突如き大の男長刀を帯て/小蔭より顕れ出汝が所持なす金千円渡/さバよしさもなくバ唯一突と罵りたり/手代ハ歯の根も合ずして/震ひ居るのミ詞なし/然るに車夫進め/て言ふ斯/る上ハ是非/がなし/吝ミて命を棄ん/より金を渡して/二ツなき命を保つに/しくハなし疾させ/玉へとありけるにぞ/手代も今ハ仕方なしと其意に/任せ懐中より金とり出すを件の車夫手はやく/之を奪ひ取跡くらまして逃去れバ手代も賊もあきれ果忙然たる/事小一時間斯てあるべきならねバ力なくなく大坂へ帰り直ちに主家へも/戻り難く実家に帰りて詫事をせんとなせしに府庁より仙坡の主家に車夫一時の謀事を以て手代の難を救ひたりと沙汰ありけれバ主家は却て手代の宿を問はせ主僕/府庁に出て該金を受とり厚く車夫にも謝したりとぞ/山々亭有人記 )

作成(L6-027): 絵師:恵斎芳幾,彫師:渡辺彫栄

出版者(L6-074): 具足屋

成立年代-元号(L6-021): 明治

成立年代-年(L6-022): 8

成立年代-月(L6-023): 2

デジタルデータ関連-デジタル化の有無(L6-046): デジタル化済

元記事原文(CUSTOM_00023): 此頃の事のよし大坂仙坡(せんば)邊の或る商家の手代某ハ主人/の用にて京都に登りしが思ひしより少し手間どる事あり/て五六日も逗留して漸やく金をも受取り用も濟(すみ)けれバ一/刻も早く返らんと午後四時すぎより人力車にて伏水まで/下りたるがモハヤ川蒸氣ハとくに出帆しガラス船も皆々/早く出拂らひたれバ仕立船の外ハ無しと云ふに一人にて/船を仕立るも少し余計なりと思ひ是より人力車を雇ひて/大坂まで夜通し陸を急がせけるに何処(いづく)にや有(あり)けんもはや/大坂へ遠くも有らぬ所の或る村を過ぎけるに人家も遠き/堤道にて川風ハ氷の如く月は山の端に傾きて夜ハ既に三/時下りと覺しきに忽まち物影より一人の長き太刀を帯び/馬乗り袴を着(はき)たる男突然と顕れ出て車を捉(とら)へて引き止め/サア其懐中の千余円を殘らず爰で渡して呉れと云ふに某/ハ大に驚ろきながら只管(ひたすら)に過(あやま)り入て何とぞ御免くださり/ませ私ハ金ハ一向持(もち)ませぬと云ふに賊ハますます声を荒(あら)/らげヤイ虚言(うそ)を吐(つく)な京都四条のどこそこで■(たしか)に千円余の/金を受ヶ取ッたに相違なし跡を付(つけ)て伏水へ下り夫(それ)より我も/人力車で先(さき)へ出抜(ぬけ)て此処に寒(さむ)サを忍(こら)へて待て居たも早く/其ぺらぺらが千枚ばかり貰(もら)ひたさサア遅々(ぐずゝゝ)せずと速かに/包(つゝん)だまゝで渡すがよい然(さ)もないとコレ是だぞと刀の柄に/手を掛くれバ最前より傍(かた)ハらに踞(へた)バり居たる人力車夫が/アヽコレまあ御待下(おまちくだ)されと立出(たちいで)て若(も)シ旦那モー斯(か)う成て/ハ迚(とて)も仕方が御座りませんあなた実にお金を持ておいで/成(なさ)りますなら此お方(かた)に渡してお仕舞なさいましと云ふに/某ハ頭(くび)を掉(ふツ)て成るほど金ハ持てゐるが是ハ主人の物なれ/バ是を渡して仕舞てハ生(いき)てのめのめ主家へハ返る事が成/りませぬたとひ此処(こゝ)で殺されても此金ハ渡されぬと強情/ばるに人力車夫ハ猶いろいろと説得し旦那ばかりか私ま/で爰(こゝ)で死(しん)でハ犬死(いぬじに)だサヽ速かに其お金を此御方にお渡し/成されと勧(すすめ)られて某も不承不承に懐中(ふところ)より小包(こづゝみ)を取り出/彼の賊に手渡(わた)さんと差し出す処を横合より人力車夫が/ヒヨイと包を引攫(ひッたく)るや否や直(すぐ)と其まま駈出(かけいだ)し飛ぶが如くに/走(はし)り去り忽まち影を見失(みうしな)ひけるにぞ賊も某も■氣(あツけ)に取ら/れ呆然たるごと小半時なりしがイヤ是ハお互ひに詰りま/せん何(いづ)レ其内また御目に掛りませうヘイさゐならと兩方へ/立別(たちわか)れしが月ハはや西山に沈(しづ)み夜ハまだ暗(くら)き堤づたひ間路(■■ぢ)をたどる某が心の中に把(と)つ置(おい)つ案じ過(すご)して立ち止(ど)まり/イッソ此淀川へ身を投(なげ)て死(しな)うかイヤイヤ此寒中に水へ入/るもチト否(いや)だハテ如何(どう)したら宜(よか)ろうと一足あるき二足/ゆくに何時(いつ)の間にやら夜も明(あけ)て氣を取り直(なほ)し急(いそ)ぐにぞ浪/華の町の何となく主人の家へハ入りかねて伯父の宅まで/竊かに歸り昨夜の様子を物語りて去れバとて證據も無け/れバ主人への申し譯なし迚も活(いき)てハ居られぬと覺悟を極/めし面(おも)ざしに伯父ハさまざま説(と)き宥(かた)めて吾(おれ)が云ひ譯(わけ)して/遣(や)るから是から一所(いッしょ)に行(いけ)よと云へども兎角ぐずぐず手間/どりたり扨も又此某が主人なる仙坡の商人何がしが方に/ハ今朝十時ごろ警視所より沙汰ありて呼び出され其方が/手代に京都へ行(ゆき)たる者ありやと尋(たづね)らるゝに如何にも此ご/ろ手代一人京へ遣したりと答ふるに又その者ハ京都にて/金子を受取り其のち如何せしやと尋られけれバ成るほど/商なひ先(さき)にて金千兩あまり受取るべき筈なれども其手代/ハ未だ歸り來らざるに依り金子受取りしや否の程も慥に/分(わか)り兼る趣を答へたりしかバ然(さ)もあるべし此金の事に付/き仔細あれバ速かに其手代を探索して連れ來れよとの事/なるにぞ此商人何がしハ是レ必らず彼の手代が身に付き/何事か有りしならんと急ぎ宅に歸りたれども手代ハ未だ/歸らず且ツ何の音信も無かりけれバ外に尋(たづ)ぬべき方も無/きゆゑ渠(かれ)が伯父の方へ人を遣(つかは)しけるに丁度かの手代某と/伯父が某に主家へ行んと出掛る処なりけれバ急ぎ同道し/て仙坡に至り主家に面会して粗(あら)まし子細を語り夫レより/また警視所に趣きたるに手代某ハ随がひ昨夜の様/子を委細に述べて彼の人力車夫こそ大賊なれと云ひける/にぞサア其大賊に厚く御禮を申すべしとやがて一人の/男を呼び出されけれバ則ち昨夜の車夫なるにぞ手代某ハ/思ハず吃驚(びツくり)して暫し言葉も出ざりしが氣を静めて承ハる/に此車夫かの所にて包を引攫りしの■■■■■■■■■/に達し或る屯所に駈け込み途中にての次第を■■■■■/の權策を以て斯く取り計らひしとて金子ハ包(つつみ)のまゝ預け/たるなりとぞ手代も主人も是を聞て且ツ驚ろき且ツ感し/厚く謝禮を述べたるよし盖し其金子ハ定めて法に從て処/分せられしなるべし

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