正徳弥生本。『鴻山文庫蔵能楽資料解題』上の内組Ｍのうち、七冊目と十二～二十一冊目に相当する。表紙は紺色の地に観世水の打出しあり。6/1/3-12の題簽（曲名と番号を刷る）左下には、朱方印「観世」が押されている。6/1/2には「右之本者観世織部太夫／章句真本令版行畢／正徳六〈丙申〉歳弥生／皇都二条通御幸町西江入町／山本長兵衛（朱印・鼎印「本家」）」と刊記がある。正徳弥生本の中でも鴻山文庫蔵五318よりも大きく、河村隆司文庫蔵96④とほぼ同じ寸法だが、鉢木にかざし文句が認められ、実際の刊行は明和以後とみられる。朱や薄い青による節付の書入がある。6/1/3-12の後見返しには、6/5/1-9の後見返しにあるものと同じ花押がみられるが、誰のものか未詳。なお、正徳弥生本については、表章氏「「明和改正謡本」廃止の事情」（『能楽史新考（二）』）、および味方健「観世流謡本「正徳弥生本」の沿革とその周辺」（『日本文学　伝統と近代』）などの論考が備わる。